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「きみはひとりじゃない」

街でぽつんと、佇んでいる人を見掛けた。
その人は僕を見ると、最初は目を逸らすばかりだったのだけれど、
数分して、十数分して、数十分も経つと、
改めて僕を見て、
そうして、僕がその人と同じなのだと気づいて、
ようやく、仕方なく、といった感じで微笑むと、
貴方もなんですね、そう言って、小さく、頭を下げた。
そのまま、僕らは動かなかった。お互いに、
誰を待っていたのか、何を待っていたのか、
それを問うようなことはしなかったし、自らも言いはしない。
それでも、僕らは、そこで待つしかなかったのだ。
そこで待つことしか、僕らには出来なかったのだ。
きっと、僕も、その人も、待つ相手がもう、
現われやしないことは、とうに分かっている。けれども、
待つことしか出来ない人は、待つことしか出来ない。
ただ、ひたすら、自分が今、ひとりではないことを見方にして。


20061104


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