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「矢印」

何処、とは口にしないけれど、僕の住んでいる地域の住人は、
皆、気持ちが悪いほどに車の運転が下手である。
いや…、下手、というのとは、少し違うかもしれない。
誰も彼もが、交通表示や交通標識に従おうとはしないのだ。
右左折禁止や一方通行など当たり前のようにお構いなし、
信号待ちをしていれば僕の車を追い越して割り込むし、
信号が赤だろうか隙を見て交差点を突破していく。
それが県道だろうが国道だろうが、昼間だろうが深夜だろうが、
ルールもマナーも常識もあったものではない。
僕は毎日びくびくしながら車を運転しているのだけれど、
ふと、ひとつだけ妙なことに気付いた。
僕の住んでいる地域の住人は、信号も標識も守らないのに、
地面に書かれた矢印にだけはきっちりと従うのである。
そりゃあもう、皆、気持ちが悪いほどに。
おかげで僕はおちおち買い物にも行けやしない。
何時間でも同じ駐車場をぐるぐる回り続ける車がいるからだ。

20060402

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