< 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 >

「水晶に映るセカイ」

指で摘めるくらいの小ささの水晶球。
何処にでもある、と言い切れるくらいのただの水晶球である。
摘んで、透明なそれの向こう側を眺めると、
その景色は逆さまに映って見える。
水晶球の中では、世界は逆さまなのだ。
水晶球の中だけには、逆さまの世界が存在している。
誰かが覗き込まない限りは誰も気付かず、
こちらの世界の誰も、その逆さまの世界に干渉することはない。
こちらの世界より余程平和な世界がそこにはある。
ただ、普通の逆さまだというだけで、誰にも侵されない。
こちらの世界ではそうはいかない。
何かに反発するということは、すなわち反逆である。
日々、世界の何処かで誰かが、世界に反発し、反逆している。
けれども誰も世界を逆さまにしようと思わないのは何故だろう。

20060402

<< prev　目次　next >>

Copyright(c) Kazui Yuuki all rights reserved.