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「闇に向かう鋭角」

もう、駄目だね。僕たち、終わりだね。
そう、彼は言った。妙にすがすがしいまでの明瞭な声で。
だから僕は信じられなかった。
その瞬間の言葉が何も信じられなかった。
更に更にと周囲が暗くなっていくと、彼の輪郭が消えて、
その視線の向けられる先が僕だけなのだという事実が残る。
僕の目をじっと見て離れない彼の視線が、
これまでに感じたどんな苦痛よりも痛くて、
僕はもうどうしようもないくらいに硬直している。
視線を逸らすとそこには闇とそこに向かう鋭角があった。

20050


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