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「パイロット」

目隠しをされて、僕はその操縦席に座らされた。
さあ、後はきみに任せよう、
そう言って、僕を連れてきた何者かは、
僕の目隠しを取らぬまま立ち去った。
目隠しには鍵がついており、僕の手では取り外せない。
そこが何の操縦席なのか分からぬまま、
僕はその何かを操縦せねばならないようだ。
否…、
僕の座った席が、本当に、
何かを操縦するためのものなのかどうかも、
目の見えぬ僕には確認することは出来ない。
僕は手探りをする。僕は騙されていないか。
僕はただ、欺瞞に満ちた空間に置かれているだけではないか。
沢山のもの、色々なものに指は触れる。
硬く、冷たく、そして凹凸の激しいものたち。
それらは一体、何を動かすものなのだろう。
僕はそれすら知らぬのに、それを動かさねばならない。
さあ、時間だ。全てはきみに掛かっている。
声が、聞こえた。


20070601


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