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「椿」

道端に咲いた一輪の椿を見た。
花弁が少しずつ散り行くのではなく、
蕾ひとつがそのまま茎から離縁する果敢無い花。
けれどもそれは何処か潔いまでの可憐さと、
己の死を知る者の、それまで生きたのだという、
誇らしい旅路への想いが含まれた、
最後の言葉を誰かに発しているようにも思えた。
それが或いは偶然、横を通り掛った自分が、
幸運にも拾うことが出来たのだとしたら、
それはきっと、とても、光栄に思うべきことなのかもしれない。
指でそっと触れる前に、その花は、
僕の目の前で一瞬だけ浮遊し、そして、
今は僕の掌の上にある。

20051211


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