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「天道虫」

道端に座って一服している僕の視線の先に、
道端を歩く天道虫の姿があった。
天道が燦々と降り注ぐ田舎道、
天道虫は悠然と歩いていくのだった、彼のペースで。
しかしそこは車が通る車道である。
僕は段々不安になる。
それほど悠然と構えていていいのだろうかと。
虫には乗用自動車の概念などないだろうから、
ただ彼の行きたいところへ向かって進むのみなのだ。
だから時折彼のそばを車が通り過ぎていくのに肝を冷やしながら、
僕はこれも自然の摂理なのだろうかと思い掛け、
しかし乗用自動車の何処が自然の摂理なのかと慌て始める僕は、
彼を遠くへ逃がしてやろうと腰を上げるのだが、
時既に遅し、次の瞬間、
天道虫は小さな点になっていた。

羽を広げて飛び立つ天道虫は、やはり悠然と。
そうか人は飛べなかったなと、僕は思いながら煙草を吸い終えた。

20051122


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