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「時計」

秒針のない時計がある。
通り掛かった僕は、その横を通り過ぎざま、
その時計が動いているのか、
それとも止まっているのか、
確かめる術を持たない。
よしんば、その時計が止まっていたとして、
その時計が指し示す時刻が、
僕の右手首の腕時計と同じ時刻を示しているか、
それとも異なる時刻を指しているかで、
どちらが正しい時刻であるのか、を、
果たして僕が決めていいものか、惑うのである。
世界標準時のアナログにしてデジタルな名の下に、
一分一秒それ未満のミクロな世界に、
己を取り込まない限りは決して、
僕は正しい時の中に身を置いている保証を得られない。

20051109


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