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「影ら」

ベンチに座って考え事をしていて、
ふと、俯けていた視線の先に、影が差したんだ。
ああ、アイツだな、と思って、僕は、
アイツが来たことに気づかない振りをした。
いつものアイツなら、僕が眠っているとでも思って、
何か驚かせるようなことをしてくるに違いない、
そう思って、僕はアイツが来るのを待つ。
けれども、あるところまで近づいたところで、
アイツはこちらに近づくのをやめた。
アイツの足の影だけが、僕の視線にすっと伸びている。
どうしたんだろう、そう思った瞬間、
影が、
増えた。
二つ、三つ、四つ、五つ、六つ…、
更に増えた。
十五、十六、十七…、
僕は怖くなって、目を瞑り、本当に寝た振りをする。
早くアイツが僕の肩を叩いて叫び声を上げるのを待って。

20051118


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