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「潜水」

イルカが水の中に落ちてきた。
イルカが浮かんでいくのを僕は見つめている。
同じ哺乳類なのに、イルカは自由自在に水中を泳ぐ。
いや、彼らにとって水中を動くことは、
僕らが泳ぐ、と称するような稚拙なものではあるまい。
しかし水の上へジャンプした彼らが水中に戻る際、
それはどう見ても水の中へ落ちてくるようにしか見えないのだ。
やはり水の中で生きる者は、空へ飛ぶことは出来ないのか。
ではそれよりもっと無様な行き方しか出来ない人間は。
今の僕のように物言わぬ残骸に成り果てぬよう、
必死に地上で暮らしているだけで終わらなければいいが、
そう少しずつ崩れていく僕は水中で黙考している。


20060506


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