< 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 >

「ペンギン」

ラジオのイヤホンを片耳に
完璧な晴天の下を歩く
歩くというよりも滑るように
舗装されたばかりの農道を
誰もいない陽炎の上を行く
片耳に響くジェット機の音
飛行機の後ろも真っ青な空
溶ける寸前のラバーの靴底
井戸の真ん前で小さな影
雲ひとつない完璧な晴天の下
ペンギンが一羽死んでいた
まるでそれが当然であるかのように
ペンギンが白く黒く死んでいた
褒めることも貶すことも出来ずに
僕はただ見つめていた
氷を得られなかった哀れな旅人を

20040708

<< prev　目次　next >>

Copyright(c) Kazui Yuuki all rights reserved.