嘘つきの命題



 まず、言っておこう。ボクは嘘つきだ。たまにはボクも嘘ばかりついていないで、本当のことも言わないと、と思ってね。
 嘘つきは自分のことを『嘘つきだ』とは言わない、って言うけれど、それは違う。嘘つきだって自分に嘘はつけないし、本当のことだってちゃんと考えている。そうじゃないと『嘘をつく』ことが出来ないよね?『本当のことを言え』って脅されたら……、そのとき、命に危険が及んでいたりしたら、流石にボクだって本当のことを言うだろう。『一生に一度のお願い』みたく、どんな酷い嘘つきだって、『一生に一度の本当』のことを言いたくなるかもしれない。現に、ボクもこうして本当のことを話しているんだしね。
 え? ちょっと待って。そんなこと言わないでよ。そもそも『本当のことを言う』なんて嘘だろう、なんて。
 まるでボクを脅すみたいじゃないか。

 うん……、じゃあさ、そうそう、こんな話を知ってる?
 自分が嘘つきでないと自称する人は、自分のことを『嘘つきだ』とは言わないよね。それは嘘をついたことになってしまうから。だから、『自分は嘘つきではない』と言う。嘘つきな人は、自分は嘘つきだけど、『自分は嘘つきだ』と本当のことは言わない。それは、自分が嘘つきなのに、嘘をつかないことになってしまうから。だから、『自分は嘘つきではない』と言う。
 ほら、気が付いた? 相手が嘘つきでも、嘘つきでなくとも、例えば『貴方は嘘つきですか?』と尋ねたときに返ってくる答えは、同じになってしまうんだ。これが、嘘つきのパラドックスってやつだね。……まあ、これは論理パズルの上でのことだけど。
 え? うん、ボクは勿論、嘘つきだけどさ。何度も言わせないでよね。ホントは最初から分かってたくせに。


目次


Copyright(c) Kazui Yuuki all rights reserved.

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送