雪の朝の話



 起き抜けでも朝一番のメールチェックは欠かせない。案の定、一通のメールが来ていた。同級生の友人からのメールだった。
『やあ、おはよう、寝坊してないかい? ニューヨークは今日、初雪だよ』
 そんな書き出しのメールは、最近の米国の季節外れの寒さと、住む地域が違っても雪の白さは同じだ、なんてことを話すものだった。日本は雪にはまだ早い。
『みんな、すっごく厚着で外出してる。南極ペンギンもビックリだ。交通網も軒並み麻痺だってさ。大変だね』
 まるで人事のように言っていて、少し可笑しかった。けれど、僕の関心は別のところ。彼と最後に話をしたのは、昨夜遅くのことだ。眠くて、笑顔でおはよう、なんて言い返せない。
 そう、僕と彼は、昨夜話をしている。
 ……勘のいい人なら、きっとこう思うだろう。ほんの数時間で日本からニューヨークに移動する手段なんて、余程でないとないはず。つまり、そんなメールが来たからといって、本人もそこにいるとは限らない――。
 リビングに行きテレビをつけると、朝のニュースがこう告げていた。
『ニューヨーク、例年より一月早い初雪』
 ほら、事実は何より単純明快。友人は、ニュースを見て僕を驚かそうとしただけなのだ、とね。
 そう思うのも無理はない。米国にメール友達がいることは、家族にも内緒のことだ。昨夜もかなり遅くまでチャットで話をしていた。最近の翻訳ソフトは本当に便利だと思う。時差があるから朝の挨拶が直接出来ないことが、少しだけ残念かな。

 僕は欠伸をしながら洗面所に行った。


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