彼女は存在しない



「私、貴方って凄く女らしい人だと思うの。なんていうのかな…、ほら、物腰は柔らかいし、口調だっていつも優しいでしょう? 男勝りな女の人、っていう言い方があるけれど、貴方はその丁度逆みたいな感じなのかな、って思うんだ」
 彼女は私にそう言った。
「麗人と優男って、どっちが、こう…、己に対してはっきりしてるのかなあ、って思うのね。それってもしかしたら、男女差のボーダーラインが段々、曖昧になりつつあるのかなあ。それとも、性別が織り成す期待値の違い? …なんて」
 彼女は次第に難しいことを言い始めたので、私はそれ以上聞くのを止めた。
 けれど、私は一つだけ確信していた。
 それは「女らしい」ではなく「女々しい」ではないのか。
 男の私に対して。


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