まだ完全には熟していない果実は、握り込めば呆気なく飛び散ってしまうのかもしれない。
その危うさが、甘美さを助長させているのかもしれないと彼は思う。
指先を使い、傷を付けないようにゆっくりと表皮を剥いていく。
内側から現れたそれは、やはり未熟さを隠しきれるようなものではない、小ぶりな姿を彼の眼に晒した。
けれど彼にとっては、それは些細な問題に過ぎない。
外気に触れたそれは、何かに怯えるかのように切なく震えた。
彼は聖なるものに口付けをするかのようにゆっくりと唇に近づけ、それを口に含んだ。
滑らかな内皮が舌の上に触れ、甘いようで微かに苦い、如実な味覚を一瞬もたらす。
上顎に押し付けるようにしてそれを圧迫すると、中からとろりと液体が溢れ出る。
彼は緩慢にその瑞々しい露を飲み下し、ようやく果肉にそっと歯を立てるのだった。
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