その存在は偽物じゃない



「さあ、眼を閉じて…、何が見えますか?」
 何が、って?
「眼を閉じた、その内側に」
 内側に?
「眼の裏側に、何が見えますか?」
 何を言ってるんですか? 眼を閉じたら、何も見えなくなるでしょう?
「そんなことはありません。何か、見えるはずです」
 何か? だから、何が見えるって言うんです?
「貴方の、瞼が。そして、それに映った、貴方の、瞳が」
 見えませんよ。真っ暗闇です。
「それは、貴方が見ていない、見えていない、というだけのこと」
 だって、光がなければ眼は何も見ることが出来ないじゃあありませんか。
「心の眼、だなんて言うんじゃないでしょうね」
 そんなことは言いません。眼が見える、とは、そういうことを言うのでしょう?
「それじゃあ、眠りながら見る夢は?」
 それは眼で見ているのではない。脳が、神経がそう錯覚させているのです。
「では、夢を見ている間、貴方の眼は、何を見ているのですか?」
 それは勿論、眼の裏側、眼の内側です。
「そこには何がありますか?」
 何が、って? 内側に? それは勿論……、


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