荒療治



「煙草、吸うの止めてくれないか」
「なに言ってるんだ。煙草は健康に良いんだぞ」
「お前こそ、何を言ってる。喫煙者は非喫煙者よりも癌などの病気に掛かりやすいとか、知っているだろう。なおかつ副流煙のおかげで、喫煙者の周囲にいる者にも迷惑が掛かるばかりでなく、そのせいで本来健常者であるはずの者が癌になってしまったりするケースだって、往々にしてある」
「分かってないな」
「何がだ」
「いいか? ここに例えば煙草を六十年吸い続けている八十歳の老人がいるとしよう。喫煙者の八十歳といえばかなりの高齢だ。身体に明らかな不具合が出ていてもおかしくはない。しかしその老人は八十の大台まで生きた。まだまだ元気そうだ。彼はこう言うに違いないね。『私は煙草を吸い続けたおかげで八十まで生きてこられた。これからも沢山煙草を吸って、九十歳までも百歳までも生きるだろう』」
「そういうもんかね」
「そういうもんだよ」
「ふうん……、分かったからさ、その煙草、早く吸うの止めてくれないか?」
「なに言ってるんだ――」


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