ある男が数年の月日を費やし、一つの物語を書き上げた。
ところが、別の男がその物語を盗作し、全く同じ原稿を仕立て上げてしまった。
出版社への持ち込みを目前に、作者と偽の作者は、互いに自分が本物の作者だと言い合った。
「私が作者だ」
「いいや私だ」
といった具合で、押し問答。
そこに第三者の男、
「私に任せなさい。いい考えがある。私はどちらが本物の作者か知らないが、物語の続きを書けるのは本物の作者だけだろう。その物語の後日談を互いに書いてみてはどうか」
そこで本物の作者は、
「いいでしょう」
と意気込んで筆を持ち、直ぐ様、物語の続きを書いた。自信作である。書けないはずがない。
胸を張って第三者の男にそれを見せれば、期待通りに色好い返事。
「成る程、面白い。これはどうやら貴方が本物の作者のようだ」
第三者の男が認めようとしたとき、偽の作者は不敵に筆を取り出し、
「私にも書けますよ、少しお待ちなさい」
紙に物語を書き始める。第三者の男はそれを読み、
「お見事、確かに、こちらの方が面白い」
先程より格段に褒め称え、驚いたのは本物の作者。そんな莫迦なと奪うように偽の作者の原稿を読むと、
「本当だ、貴方の方が面白い」
と褒め称えた。本当に面白かったのである。負けを認めるしかない、完璧な出来。完敗であった。
というわけで、本物の作者は、すごすごと退散したのだった。
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