所詮、他人事



 ビルの角を曲がると、大勢の人が列を作って歩いてくるのに出くわした。
 一体、何の行列なのだろう。一列になって、整然と彼らは進んでいる。
 すれ違いざまに観察してみると、彼らは老若男女、様々な人がいる。
 それこそ、小中学生から社会人、老人まで。色々な格好で。
 しかし彼らに共通しているのは、白い一抱えもあろうかというリュックサックを背負っていること。
 和気藹々とした行列ではない。誰もが真剣な目つきをして、無駄口を利かず、沈黙を連れて。
 彼らとすれ違いながら、僕は歩道を行く。行列はなかなか終わらない。
 終わらない、と一言で片付けてしまうには簡単ではなかった。長いのだ、その列は。本当に。
 何十メートル、何百メートル、或いは、という規模なのだ、それは。
 一体彼らは、何の目的があって歩み続けているのだろう、一心不乱に。
 やがて列は、信号のある交差点を横断していることに気づいた。列は横断歩道を渡っている。
 いやしかし、その信号は既に何度か、赤信号に切り替わっているはずなのだ、この長さであれば。
 こんな長い行列であれば、幾度か分断されていてもおかしくないのに、彼らの列は乱れていない。
 その理由は明確で、僕の目の前で赤信号に変わった横断歩道を、彼らは悠々と渡っている。
 対向する車道にて、自動車が呆気に取られたように佇んでいた。気持ちは分からないでもない。
 とてもこの行列を、邪魔することなど出来ない、そんな雰囲気が漂っている。
 しかし、目を凝らしてみても、この行列には終わりが見えてこないのだ。
 何処まで続いているのか、この列は。何処へ向かっているのか、彼らは。
 彼らに質問を投げ掛ける者も、辺りにはいない。それさえもはばかられる、そんな空気。
 次のビルの角で、僕は目的地に向かって進路を変えた。
 荷物が重い。背負ったリュックサックを、僕は肩を怒らせて背負い直す。
 列が、少し乱れたような気がして、僕は後ろに続く者に軽く頭を下げた。
 目的地には、まだ、遠い。


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