五月蝿い

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眠れない。
針の音がする。
時計の秒針の音がするのだ。
普段は気にならないくせに、眠れないときに限って、五月蝿いのだ、これが。
気にしないようにしよう、と思えば思うほど、五月蝿くなってくる。
駄目だ。延々と音がする。耳の奥に響いてくるような、耳障りな音。
五月蝿い。
寝室の時計の電池を抜いた。
まだ音がする。何処だ。隣の部屋の壁伝いに聞こえてくるのか。
居間の時計の電池を抜いた。
まだ音がする。小さな時計でも、意外と響くものか。
五月蝿い、五月蝿い。
寝室の目覚まし時計の電池を抜いた。
まだ音がする。遠くから聞こえてくる。遠くなのに聞こえてくる。
台所の時計の電池を抜いた。
書斎の時計の電池を抜いた。
玄関の時計の電池を抜いた。
五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い。
まだ聞こえてくる。もっと小さな時計か。
サイドチェストの上にあった腕時計のカバーを開けた。電池を取り出す。
書斎の机の上にある、デジタル電波時計の電池も抜いた。
まだ聞こえる。何処だ。上か。下か。
隣か。

隣の家か。
お前の時計か。

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