グラス半分に注がれたミルクと、その中に沈んだ氷が冷たい音を立てる。
掌で包み込むようにグラスを手に取ると、少年はミルクを喉に潜らせて、赤い唇の表面を仄かに白濁させて、
「甘いね」
と口角を持ち上げて囁くんだ、ぼくの眼を真っ直ぐにじっと見つめて。
銀のスプンをグラスに挿し込み、すくうように取り出した氷の欠片をテーブルの上にそっと置いて、電熱の光でそれが緩慢に融解する様を眺めていたりして。
少年は瞬きの少ない表情で、ぼくとそれをずっと見守っていた。
店に持ち込んだ砂糖菓子、口についたハニィディップを、その細い指でぐっとぬぐって、
「甘いよ」
とぼくの口先に突きつけてくるんだ。ぼくは応えられずに、まじまじと見つめていると、不意に彼はぼくの口の中に自分の指を突っ込んで、直ぐに舌を指先でなぞった。
とろりとした蜜の甘さと、彼と対面する気の苦さと、不思議と香る少年の香り。
「美味しいだろう?」
と彼は口角を持ち上げて、自分の指をそっと含んだ。
もう、そこに何の味があるのか、分からなくなっている。
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