複製猫



「いつ続報が出るのかと、気が気でならない」

 世界中の人々が怯えている。
 世界を騒がせる切り裂き魔の宗教集団。ナイフの傷に神のメッセージを見るのが彼らの教示の求め方。そして同時に、自殺を続ける信者たちの数も多いのだった。彼らは己の死を最終地点に定め、世界のあらゆる所で人類の死を渇望している。信者は世界で数十万人を数えるという噂すらある。
「人に死を与えたのは神だ。神の所業で最も聖なるものは、人が人を殺すように仕向けたこと。否、そう定めたこと。それに相違ないのだから」

 あるところに一人の模倣犯がいました。
 その男は、ある一人の殺人犯の模倣を続けて、もう十数年になります。
 殺人犯は、一年に何度も何度も、何人も何人も、人を殺すのです。模倣犯は、その模倣をすることを衆生の喜びとしていたのでした。けれど、それが次第に苦痛になってきました。自分が殺人犯であることが世間に発覚してはと恐れるようになったのです。
 模倣犯は知りませんでした。その殺人犯は、ある宗教集団の幹部であったのです。彼は信者に例を示すために、毎日毎日頑張って、人の命を奪うよう信者に命を下し、また己も奪い続けていたのです。
 可哀相な模倣犯。殺人犯が宗教の信者だと知っていれば、一人で悩むこともなかったのに。止めたくても血に魅入られ、毎日毎日頑張って、切り裂き続ける模倣犯。


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