後ろは振り向かなくてもいい。ひとつだけ、きみにあげよう。
さあ、ポケットに手を入れるんだ。そこにあるものに爪を立ててごらん。
きっと、快楽の始まりはそこにあるから。
きみが誰かなんて、ぼくには関係ない。きみがきみであることが、何より大切なのさ。問う必要はない。
ショウは今、幕を開こうとしている。主役は……、そう、勿論、きみとぼく。
ポケットのものを取り出したら、気づかれる前に奴の首に素早く歯を立てる――、そうすれば、全ては始まる。
……何が始まるかって?
ははッ、愚問だね。そんなこと、分かっているだろう?
……そう、その通り。奇跡は現れない。それが唯一の事実さ。
まだきみは、奇跡なんてものを信じていたの?
だったら、もうひとつ教えよう。
この爪の先をきみの喉に滑らせて、この羽が全て赤く染まるまで、きみが痛みを耐えることが出来たなら、ぼくはきみに祝福を与えよう。
ぼくを哀れに思うなら、永遠の快楽と引き換えに、きみは苦しみをぼくにくれるかい?
快楽しかない命の不価値、きみには分かっているのかい?
それでも良ければ準備は出来てる。
さあ喉を反らせて。ぼくを見て。この白い翼を真紅の色に染めたなら、きみに永遠の快楽を授けよう。
それがたったひとつ、ぼくがきみにあげることが出来るものだ。
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