サード・トリップ



 色の悪いネオンに照らされて、今夜も漆黒の街に蝶々は羽ばたく。
 サイケデリック・バタフライ、と呼ばれる色取り取りの外套を身にまとった少年たちが、闇の中を暗躍する。絶やさない微笑を裏返せば、その手には彼らの神経のように研ぎ澄まされたナイフ、柄の中身は純正のドラッグ。口に含めば、恍惚と共に永遠の夢が得られるだろう。ただし、二度とは戻って来られないけれど。
 二羽目の蝶が彼と出会えば、触覚が触れ合って感覚は等しくなる。そんな風に、少年と少年は触れ合う。心を通わせる必要もなく、けれどいつの間にか互いの繋がりは解けなくなる。安いクスリよりもずっと悦楽は美味で、同時に得られる安堵はずっと大きいから。
 街のネオンが色を消すと共に、薬の効果は消え失せて、蝶たちは街から姿を消すだろう。そこには少年というカタチは残されることはない。最初から、彼らの存在は象限として存在すべきものではないのだ。
 或いは、最初から幻想としてあるべきものが、無為な願いによって現れ出でた、と言うべきなのだろう。
 その証拠に、後にはただ、綺麗な色のナイフが一本、残されている。


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