「たっ、助けて! 助けてください!」
「は? ちょ、ちょっと、なんですいきなり?」
「何でもいいです、とにかく助けて……!」
「助けるって、だから、なんで? 何から?」
「わ、も、もう、いいっ! いいですっ!」
「はあ……?」
 いきなり慌しく走ってきて、縋るように話し掛けてきた男は、まくし立てるように助けを求めると、結局、直ぐまた走って行った。全力で、何かから逃げるように。
 何がなんだか分からないまま、全力で前方を走っていく男の姿を唖然として見送った。振り返っても、誰かが追ってくる姿は見えない。
 次の瞬間。何か、白く光るものが身体の横を音もなく通り過ぎていった。物凄い速さで、男の走って行った軌跡を、そのまま辿って。半ば呆然としていると、不意に、ゾクリ、と背筋に冷たいものがはしった。
 何か……、とてつもなく恐ろしいものが、後ろから追いかけてくるような気がしたからだ。
 どうしようもない不安感が脳裏を包み込み、私は走り出した。

 逃 げ な く て は。


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