僕らの犯行現場


「――外を見遣れば一面が青空。翼を持った鳥たちは自由に天空を飛び回り、風を味方につけて何処まででも気侭な旅を続けている…。それに引き換え私は哀れ、街の陰も見えぬ古城の一角、盤上の駒の如く不安定に地に立つ塔の頂上に幽閉の日々。朝も夜も同じ、一人きりの刻の沈黙。与えられる食事は愛玩動物の餌に等しく、訪ねる者は一人としておらず、遅々と死に向かう様を楽しんでるかのよう…。
 そもそも、私が捕らわれたのはいつのことだったか。理由も聞かされず、私がここにいることで何者かが救われるとでも言うかのように、活かさず殺さずの皮肉な平穏さが与えられている。囚われの身。自ら命を絶とうにも死を願う勇気はないし、元より命運に負けるつもりもない。けれど…、時折、悲しくなるのは避けられようもない。誰かが助けに来てくれないかと、そう思わずにはいられないのは、やはり私の弱さがそこにあるからだろうか。それとも、弱いからこそ、私はここに連れて来られたのだろうか…。問いに答えてくれる人も、ここにはいない。いえ、もう私は、誰とも話も出来ずに命の灯火を散らせていくのかもしれない…。
 石造りの壁が周囲をぐるりと威圧し、お前を逃しはしないと私を常に見つめているよう。そう思ってベッドの上で天井を眺めると、石の窪みが人の卑屈な笑みに見えてくる。お前はもう自由になれない。永遠にこの塔の中で生かされ続けるのだ…、そんな幻聴が聞こえてきそうだ。けれど、それもまた、私の中の弱い私が囁いているだけのこと。望みを忘れずにいれば、きっといつかは本物の自由が取り戻される。 でも、それはいつ? 私が希望を失うまで、私をここに閉じ込めた誰かは私を開放しないかもしれない。希望と絶望は、いつも背中合わせで私の隣にいる ――、だなんて。
 ――ふざけないでよ、まったく…」
 (読んでいた書物をテーブルの上に放り出す音)
「悲観論者の論文を読んでいるわけじゃないのだから…、そんなもの、聞きたくもないわ。そんなことを言っていたら、私はとうにこの塔から飛び立っているでしょうよ」
 (白いドレスを身に付けた少女、チェアの背に身体を預ける)
「物語なんて、大っ嫌い。夢なんて、眠っているだけに見る幻だけで十分よ。誰も彼もにそんな、良い見通しだらけが与えられていたら、こんな物語が考え出されること自体、莫迦らしくなるわ」
 (白いマントにスーツの少年、突然登場する)
「ご立腹だね」
「きゃあっ!」
 (がたがた、と音を立て、少女、危うく倒れそうになる。
  少年、慌てて少女を支える。少女は恐る恐る、)
「だ、誰?」
「驚かせてしまったら申し訳ない。ウィリアム・メディスン候の御子女、カロライナだね?」
 (少女、所在なさげに首を縦に振る。少年は言い訳をするように、)「ボクはカーム・クライシス・どうしてこんなところに、と思ったものだから」
「ど、何処から入ってきたのっ」
「何処って」
 (カームと名乗る少年、窓を指差す。石壁の隙間がぽっかりとあるだけの、言葉だけの窓)
「その窓からだけど」
「窓――」
 (カロライナと呼ばれた少女、立ち上がり、窓に歩み寄る。下を覗いて、)
「――ここがどれくらい高いか、知らずに言っているわけじゃないでしょうね? お粗末なものとはいえ、一つの塔の天辺なのよ? 宿屋の屋根に上がるのとは違うのよ?」
 (少年、何を当たり前のことを、というような顔をして、)
「分かっているよ」
「分かっていないじゃない。まさか、壁をよじ上がってきたなんて気味の悪いことを言わないでしょうね? それが事実だったとしても、私は絶対に信じないから」
「どうして? ヴィジュアル的に不味いのかな」
「そんなこと、どうでもいいでしょう。事実を見たまでの問題よ」
「ははあ…」
 (カーム、口元に手を遣ってこっそり笑う)
「どうなの?」
「半分、正解かな」
「半分?」
「いやいや、壁を這ったりはしてないよ。そうじゃなくて」「何なの」
「いやあ…、説明するまでもないと思うんだけどなあ」
「だから、何なのよ」
 (苛苛し始めたように少女は靴の爪先で床を踏み鳴らす)
「飛んできました、実際の所」
「飛んで?」
「うん」
「あ…、そう」
 (あっさりとキャルは頷き、拍子を抜かれたような面持ちのカーム)
「…、やけにあっさりしてるね」
「するわよ、そりゃあ」
「そうなの?」
 (少女、窓を背に、両腕を抱える)
「そうよ。こっちはね、もうとっくに身に覚えのない、信じられないことだらけなんだから。今更空を飛んで塔の部屋に入りました、なんて話、驚かないわ」
「いや…、話、じゃなくて。本当に飛んだんだけれどね」
「言い直さなくても分かってるわよ。むしろ紛らわしいわ」
「う…、そんな突っ込み、初めて受けた」
「貴重な体験じゃない。良かったわね」
 (何かが変だ、というような表情で少年、)
「で…、きみは、どうしてこんなところに住んでるんだい?」
「住んでいるように見えるの?」
「違うの?」
「違うわよ! 貴方の目、節穴なんじゃないの?」
 (少しむきになって応えるキャル、おどけてみせる少年、)
「いやあ…、一応、生身の眼球ですけど」
「真面目に応えないで!」
 (真面目? と密かに呟いたカーム、)
「じゃあ、どうしろっていうのさ」「知らないわよ」
 (がっくりと肩を落としてカーム、)
「ごめん…、冗談だよ、今のは」
「…どれよ」
「『ここに住んでるの?』」
「ああ、それね…」
 (半分、どうでもいいようにキャル、)
「それはこっちが訊きたいこと」
「と、言われても…」
「それを知っていたら、こんな嘆きは必要ないでしょう? 住んでいたなら住んでいたで、楽しいことも少しはあるんじゃない?」
「きみは楽しくないんだ?」
 (手を広げて、部屋の全景を示す少女)
「当たり前でしょう。こんなところにいて、どんな楽しみがあるっていうのよ」
「うーん…」
 (しばし、考え込む仕種を見せる少年)
「そうなのかなあ」
「そうよ。現実を運命として受け止めるも、無常として悲観するも本人の勝手だけれど、そうしたところで即座に自由が得られる保証なんてないんだから」
「成程」
「大体、塔の天辺の小部屋に幽閉、なんてロマンがないと思わない?」「これはまた、突飛な…」
「思うでしょう?」
「いや…、ボクはむしろロマンを感じるような気がするけれど…」
「それは気がするだけ! 私を御覧なさいよ、見るからに退屈そうでしょう?」
 (何故か遠い目でカーム、)
「それをボクに見ろと要求するんだ…、何だか焦点がずれているように感じるのは…、ボクだけだろうか」
「貴方だけよ」
 (きっぱりと少女は言い放ち、少年、肩を落とす)
「直截な人だね、きみも」
「そんなことはどうでもいいの」
「いいんだ?」
「いいのよ。問題はね、私をこんなところに閉じ込めた誰かが、本当に私を閉じ込めておくしか手段をとらないってところにあるのよ」
「というと?」
「分からないの?」
 (少女、右手の指を一本立てて、)
「こんなところに一々連れてこられたからには、何かの目的があるはずなのよ。そう考えるのが当然だと少なくとも私は思う。そうでしょう?」
「目的と手段の一致を受け手から求めるという視点だね」
「分かったようなことを言わないで」
「分かっているよ」
「――ともかく。私を呼びつけるなり話を求めるなり、何か…、あっていいと思うのよね。でも、何もないの。本当に、なーんにも、ないの」
「ふうん」
 (詰まらなそうな声をわざと出すカーム)
「――部屋の外には見張りが終始いて、私が小細工をしないように様子を伺ってる」
 (キャルの指差す先には部屋の出口、塔の螺旋階段につながる頑丈そうな扉。
  こっそりと忍び寄った少年、扉に耳を近づけて、外の気配を伺う)
「成程、いるね…」
 (呼吸による空気の流れを感じたのか、納得したように頷き、)
「こんにちはー」
 (コンコン、とノックまでしてみせる)
「ば…っか! 何してるのよ!」
 (慌てて扉の前に駆け寄り、カームを引き剥がすキャル。
  よろよろと後ろ向きのまましばらく歩き、ベッドに座らされる少年)
「何するのさ」
 (不思議そうな顔つきになる少年。少女は息を乱して、)「莫迦じゃないの? 貴方、侵入者なんだってことを分かってるわけ?」
「当然じゃないか。入らずに入ることなんて出来ないよ」
「違うわよ! 貴方の身の心配をしてあげてるの」
「どうして」
「決まっているじゃない。私が無事にここに居続けることが、私をここに入れた誰かの目的の一つなのよ。…変な話だけどね。そして、貴方という闖入者が現れた。扉の外には見張りが常駐よ? 何のための見張りだと思ってるのよ」
「ああ、そういうこと。捕われ人のパラドックス、ってわけね」
「今は…、気づかれなかったのかしら。運が良かったわね」
 (キャルの言葉に肩を竦めるカーム)
「ねえ」
「何よ」
「きみ…、まだ分かってないのかな?」
「だから、何がよ」
 (今度は呆れたような顔で少年、)
「変だと思わないかい? 僕は、その窓から悠々と入ってこれたんだよ」
「そうね…、貴方は飛べるのだから、この塔の高さなんて問題ではないでしょうね」
「そうではないよ」
 (カームは指を一本立ててキャルに突きつけ、)
「そうではなくて…、きみは、本当にこの塔に幽閉されているのかなあ、と思ったものだからね」
 (呆気に取られたような顔つきになるキャル、)
「な…にを、言ってるの?」
「きみは」
 (立ち上がり、腰に手を置きつつ、少年、)
「自分が本当に『幽閉』されていると思っているの?」
 (覗き込むように少女の目を見る)
「ちゃんと、食事も与えられているんだろう? ひもじい思いをしない程度には。それに、きみは退屈だと言ったけれど…、ついさっき、読んでいたじゃない」
 (そう言って、机の上の本を指差す)
「それ一冊のみだというのならば、却って拷問みたいなものだけれどね」
 (小さく苦笑いをして、少年、)
「つまり、最低限の時間潰しには困らない配慮がされているように、ボクには見えた。もしかしたら食事と同じように、時折本も支給されているんじゃないかと勘繰りたくもなるね」
 (キャル、沈黙。カーム、嬉々とも取れる顔つきで)
「そして話を聞くに、きみがここに居続けさせられている目的は、『きみがここにいる』という事実こそがそれではないかとしか思えない」「…」
 (訝しみの表情でキャル、)
「――誰なのよ、貴方」
 (一つ目の確信を付く)
「名乗っただろう? カーム・クライシス」
「違うわ。ここに、何の目的で来たのかと訊いているの」
「ああ、やっと訊いてくれたね。わざと無視されているのかと気が気でなかったんだ、実は」
「無視してなかったじゃない」
「まあ、確かにそうだけれど…、頭が良いね、きみ」
「嬉しくないわよ」
「ごめん」
「謝らないでよ、悪いことを咎めているんじゃないんだから」
「どうだろうね」
「…そうね。悪いことをしているのは貴方だものね、怪盗さん?」
 (チェスの勝負に勝ったような音声で、)
「貴方の思い通りにはさせないわ。誰もが黙って連れて行かれると思ったら大間違いなんだから!」
 (そう言うと、ベッドのピロゥの下から書簡を取り出す。
  そこには達筆な字で、カロライナを連れて行く旨が記されている。
  それをカームに突きつけて、凛とした声で、)
「ここに、貴方の名前が書いてあるわ。先日、送られてきた予告状よ」
 (目を丸くする少年、)
「なんだ…、知ってたんじゃないか」
「そっちこそ、何も知らない振りをしていたでしょう」
「お互い様だね」
「茶化さないで。飛んできた、と分かった時点で、貴方の正体は分かってたわ、怪盗様」
「そこまでお見通し、か。道理であまり驚かないと思ったよ。ボクが来ることを知っていたんだね? ならば…、こっちも余計な偽りはいらないね」
 (彼にとっては紙切れであろうそれを横目に、カーム、)
「きみは、…誰なんだい?」
 (再びキャル、不意を突かれた表情で、)
「なんのこと、よ…」
「もう、化かし合いはなしにしないか」
 (カームの目付きが僅かに鋭くなる)
「きみは、ボクが探す人じゃない。そうなんだろう? きみは、身代わりに過ぎない」
 (一瞬言葉に詰まる少女、しかし、)
「何を言っているのよ。身代わりって、何のこと――」
「聞き分けがないね」
 (数式を証明するときのような毅然とした口調で)
「いいかい? 彼の人を連れに参上するとの書簡を届けたのが少し前のことだ。そして、この小さな塔に少女が一人過ごし始めたのも、丁度その頃。尖塔で、部屋は螺旋階段を上がった頂上にあり、常に見張りが付いている。そんな状況下で、誰が彼女を攫えるって言うだろう?」
 (不自然な沈黙を守るキャル)
「けれど、相手はこのボクだ。既に証明がされたように、ボクは空に開けた窓から侵入出来る。お誂え向きに、外界に開けた窓が付いた石造りの塔だ。お嬢様の顔を見ることなんて朝飯前だね。実際、ボクはこうして、きみの前にいる」
 (タン、と床をタップし、)
「幾ら楽観的な心情の持ち主だと言っても、軟禁されているお嬢様が、退屈だなんてことは言わないものだよ。事は軟禁なんだよ、軟禁? もっと悲観的になろうよ」
 (チチチ、と指を振って、)
「夢も希望もない、なんて悟りめいたものの言い方もね。あれね、客観的に見ていないと分からないけれど、却って疑わしいんだ」
「…聞いていたのね」
「つい、本音が出たんだね。ボクだって、そこまで鈍くはないつもりだよ」
 (しばらく、沈黙。相手の言葉を促すように、)
「いい加減、認めたらどうなんだい? いつまでも白を切ろうとしたって、そうはいかないよ」
 (ふう、と溜め息をついて、キャルを名乗る少女、)
「…そうよ」
 (口元を上げてカーム、)
「やっぱり、きみは身代わり、だね?」
 (諦めたような声で少女、)
「そうよ、その通り。だから、こんなところにはもう用はないでしょう。残念だったわね、怪盗様」
「そうはいかないんだなあ」
「?」
「一度予告をしてしまった以上、失敗は許されないんだ。ボクの信条としてね。例え身代わりの別人だったとしても、ボクの成したる行為に代わりはない。本当の目的である本物のカロライナ嬢を連れていくことは、どうやら諦めなければならないみたいだけれど――」
 (言葉を区切り、言い含めるように、)
「その代わりに、きみがいる」
 (ゆっくりと手を差し伸べ、少女の手を取った)
「そう…、言葉通りの身代わりだね」
「なっ…、――」
 (パッとその手を振り払い、)
「や…めてよ、――私をどうする気?」
「それも、もう止めたら? いい加減白々しいよ」
 (カームは、きっぱりと言い放つ。
  数瞬、逡巡するように狼狽えた視線を彷徨わせていた少女だったが、)
「――本当に、全部気づいているんだね」
 (少女の口調が突如、少年のものに変化する)
「そうだよ。ぼくは、あの子の身代わりだ。名前はキャロルード」
 (少女?はチェストから髪紐を取り出して、後髪を括る。
  そうして見れば、成程…、少女のように容貌の整った髪の長い少年である)
「だから、もう一度言うよ。貴方の訪問は、空振りだ。あの子はこことは全く別の場所に匿われているよ。もちろん、ぼくにも場所は秘匿。無駄足だったね」
 (胸を張って、してやったりといった顔で言い放つ少年、しかし、)
「ふ…、くくく…」
 (カームは突然笑い出す。怪訝な顔をしたキャロルード――キャロ――は、)
「何が可笑しいのさ」
 (しばらく堪え切れないように笑っていたカーム、)
「言っただろう? 身代わりでも、行為の代行には十分だと」
 (少年のドレスの裾を掴んで、彼を引き寄せる)
「あの子、という言い方や、きみの名前で分かったよ。彼女が双子だったとは知らなかった。きみはその片割れなんだね」
 (ぐ、と言葉に詰まるキャロ)
「――…」
 (ドレスの裾に指を伸ばした彼を見て、)
「妙な勘繰りは、なしだよ。ボクだって手荒な真似はしたくない」
 (怪盗の少年、再び指を揺らす)
「貴方の企みは分かったよ。ぼくを餌にして、あの子をおびき出そうと言うんだろう?」
「察しが良いね。そう、その通りさ」
「は…、そう巧く行くかな」
「威勢が良いね。けれど…、物事の流れは常に一つの終着地を目指すものなんだ」
「それが、貴方だと?」
 (はっ、とキャロは笑い飛ばす)
「その不文律を、ぼくが崩してみたいね」
「やれるものなら、ね」
 (余裕の笑みで、カーム、手を引いて窓に向かう)
「じゃあ、行こうか? …見張りさん、聞こえているでしょう? 代わりの彼はちゃんと連れて行きますから、きちんと報告してくださいね」
 (喜色の声で、怪盗は扉の外に声を掛けた。
  キャロルードは言葉もなく、それを見つめる)

  □   □   □

「――きちんと報告してくださいね」
 最後に、怪盗の少年は、扉の外にいる私に声を掛けた。
「――…」
 私は勿論、返事をするわけにはいかなかった。ぐっと口を引き締めて耐える。
 『C=C』のサインで署名された書簡が届いたあの時から決まっていたことなのだ、これは。怪盗は彼を連れ去り、その報告をするために私は扉の前でそれを待っていた。
 一言でも返事をするわけにはいかなかった。声を出したら、私がここにいることが分かってしまうからだ。それだけは、絶対に出来なかった。身代わりとなった少年に、私は全てを託した。
 バサリ、と翼の羽ばたく音がして、…やがて隣の部屋からは人の気配がなくなった。
 私はほっと息を付いて、ベッドサイドの椅子に座る。二間続きのこの部屋は、元々、彼と私の秘密の遊び場だった。それを改造し、さも幽閉に似合いそうな部屋と見せかけているに過ぎない。外界に続く本当の出口は、更に向こうのもう一つの扉のことだ。
 見張りなど、本当はいない。その代わりに、私はそこで、事の成りゆきを始終伺っていた。向こう側からは見えない覗き窓を作り、息を殺して二人の遣り取りを見守っていた。
 狙われた少女の代わりを、その片割れが努め、ひいては怪盗を打ち倒すと、彼は申し出てくれた。守られる者の立場としては危険が大きいのは当然のことだが、私はこの場に…、彼の隣にいることを望んだのだ。
 そして…、果たして怪盗は、彼を共に旅立った。彼が無事に戻って来られる保証はない。けれど、黙って私が攫われるわけにもいかないと、私たちはこの計画を練ったのだ。…こんなとき、私は弱い、と思う。結局、私はただ待つだけの存在に過ぎず、そしてただ、信じるだけなのだ。
 弟の――、キャロの勇気に、私は感謝する。


("Crisis Carnival" is closed.)


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