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「耳の傷ついた猫」

気がつくと、ぼくの目の前に一匹の猫がいた。
ぼくの目をじっと見返して猫はいた。
どうしたの、とぼくの口は動いて、
猫に近寄っていくと、
猫は動こうともせずに、一度だけ短く鳴いた。
ぼくはその場にしゃがんで、
もう一度、どうしたの、と訊くと、
その猫は悲しそうな顔をして、
一瞬口を開いたかと思うと、
ぼくの手の甲に、必死に爪を立てた。
冷たい感覚と鈍い痛み。
三本の赤い線が出来て、
でも、
ぼくはそっと猫の額を撫でた。


20061117


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